第63回八王子市民大会・中学部決勝戦レポート
FC Branco八王子 R 0-0 上柚木中学校
延長(1-0)
63回目を迎えた今年の決勝戦は、昨年度優勝のARTE八王子クラッキを準決勝で破り、決勝に駒を進めたFC Branco八王子R(以下 Branco)と、昨年度の雪辱を果たせるか、2年連続で決勝進出を果たした上柚木中学校(以下 上柚木中)との顔合わせとなった。
フォーメーションは中盤をフラットに並べた4-4-2システムの上柚木中に対し、Brancoはワンボランチで中盤を逆三角形にした4-3-3であった。最後尾には上柚木中は8番井上、Brancoは1番阿部と両者ともハイレベルの大型GKを配置し、ゴールマウスを堅守していた。
立ち上がりはBrancoがゆっくりとしたパス回しからチャンスをうかがう展開、上柚木中は奪ったボールをシンプルに前線に放り込んでカウンターを狙うといった流れであった。最初にゴールに迫ったのは上柚木中。左サイドからのクロスボールが流れて直接ゴールに向かったが、GK1番阿部がはじき何とかコーナーキックに逃れてことなきを得た。その後もBrancoがボールをキープし、パスを回しながら前線にボールを入れる機会をうかがう。一方の上柚木中は、中盤ではボールを支配されながらも46番佐藤も下がり、何とか最終ラインで守りきり、奪ったボールはシンプルにFW44番高木に託すといった展開が続く。Brancoの中では7番近藤が、マイボールの時から的確な判断でリスクマネージメントをし、ミドルサードの高い位置で上柚木中の攻撃の芽を摘み取っていた。
上柚木中は単発ながらも44番高木が17分過ぎに右サイドをドリブルで切り込み、19分には46番佐藤からのパスを32番妹川がシュートを放ち、Brancoゴールを脅かす。21分に今度はBrancoがチャンスを作る。14番藤巻が絶妙のタイミングで裏へ飛び出しGKと1対1になった。しかしここは上柚木中GK8番井上が立ちはだかり、ボールを蹴りだした。Brancoは幅と厚みをとり、コート全体をうまく使いながらも、なかなか最前線に良いタイミングでボールを入れることが出来なかった。横パスは回せるものの良い縦パスが入らないため、攻撃のペース(攻撃スピード)に緩急がつけられず、最終的にはFW10番小林のスピードに頼る攻撃が続いた。一方上柚木中は、ボールを支配されながらも41番林を中心にシュートまで持って行かせない粘り強い守りで凌ぎ切る。比較的スローペースな試合展開で前半が終了した。
後半も序盤からBrancoがボールを支配する展開でスタートした。ベンチからの指示か、ボール回しにリズム感を取り戻し、32分には最前線でBranco11番小原が上柚木中DFにしかけて絶好のシュートチャンスを作る。しかしまたしても、上柚木中GK8番井上ががっちりとコース埋めて対応した。その後もBrancoは、上柚木中ゴール付近まではボールを持っていけるものの、バイタルエリア(ゴール正面のペナルティエリアライン付近)の人数が不足し、上柚木中のゴールを割るまでには至らない。両者、疲労のためか徐々に運動量が少なくなり、スピードも落ちてきた。Brancoはボランチの高さまではボールを運べるものの、なかなかFWに良いボールが入れられないため、シュートまで行けないといった状況が続く。
このような展開の中、47分に上柚木中のゴール前に放り込まれたボールをGK8番井上がキャッチし、素早い判断で最前線にロングフィード。そのボールに上柚木中の38番塚本と39番堀田が反応し、長い距離を走りきって一気にBrancoゴール前に迫った。惜しくもゴールを割ることは出来なかったが、流れを変えるには充分なカウンター攻撃であった。51分には上柚木中の途中出場の36番三須が、ペナルティエリア付近でくさびの動きから33番末広、46番佐藤がそれに絡み、厚みのある攻撃が行われた。55分には上柚木中のセットプレー。46番佐藤のキックはBrancoゴール前でGK1番阿部も越し、上柚木中FWがそこに飛び込み、あわやゴールインかといったシーンとなったが、BrancoのDF陣がなんとかはじき返した。
後半終了4分前には、逆襲に転じたBrancoのFW10番小林がゴール前に飛び出すもまたしても上柚木中GK8番井上が立ちはだかりゴールを割らせない。終了までの3分間は、Brancoが上柚木中ゴールを攻め続ける場面の連続ではあったが、最終的にゴール前に人数をかけることが出来ずに後半が終了し、第60回大会以来の延長戦へともつれ込んだ。
延長戦は1点先取のVゴール方式で行われた、ここまで、粘り続けた上柚木中だったが、疲労からの運動量低下は時間とともに激しくなっていた。延長開始1分、Branco10番小林がドリブルでゴール前に迫り、右側20mほどの距離から放たれたシュートが上柚木中のゴールネットを遂に揺らした。この瞬間にBrancoの優勝が決まった。
試合全般を振り返ると、ショートパスからしっかりとビルドアップしてゴールへ向かおうとしたBrancoだったが、なかなか最前線に良い縦パスが入らず、リズムが掴みきれなかったのではないかと感じた。しかしながら最終的には、堅守の上柚木中のゴールをこじ開け、勝負強さを見せてくれた。一方、シンプルにボールを回して最前線にボールを配給する上柚木中は、相手ボール保持者へのアプローチを徹底させ、パスは回させてもシュートは打たせない粘り強い守備を終始見せた。そして守備から攻撃への切り替えを早くすることで、何度もBrancoゴールを脅かした。両者ともボールを丁寧に扱い、決勝戦にふさわしい好ゲームであったと思う。
選手の皆さんには、今後のユース(高校生)年代でさらに活躍し羽ばたいてくれることを願い技術委員会からいくつかアドバイスをさせていただきたい。
① ルックアラウンド
両者とも決勝戦らしい素晴らしい試合展開ではあったが、まだ観ることの乏しさから、「止めてから考えている」「観えていない」という場面が何度もあった。「観ていない」からこそ選択出来ないプレーが多かったように感じる。『ボールが来る前に観る。観ておく』『動きながら観る』を意識して、練習や試合に取り組んでみて欲しい。そのことにより、さらにプレーに幅が広がると思われる。
② パス&ムーヴ
簡単に言うと「パスを出したら動く」 Brancoの選手たちのこの「パス&ムーヴ」には目を見張るものがあった。近代サッカーでは「守備しかしない」「攻撃しかしない」選手は、試合に出場する機会が少なくなってきている。「パスを出したら終わる」選手も同様に、ユース年代では通用しない。しかし、何でもかんでもパスを出したら動けば良いのではない。①であったように「観る」ことからの良い判断で「動きの質」も同じくして向上させていって欲しい。
以上、簡単ではあるが今後の参考にでもしてもらえれば幸いである。
今年の全国高校選手権の東京都大会では、3年前の第60回八王子市民大会で優勝した由井中出身の市川君の姿をつばさ総合高校で見ることができた。また準優勝のARTE八王子出身の浜崎君と米窪君が東京都の準決勝まで勝ち進み、西が丘サッカー場で活躍していた。君たちが数年後、駒沢や西が丘さらには全国へ羽ばたいて、国立競技場で成長した姿を見せてくれることを期待している。

